トップ種と実モノ語りアスパラ農家 熊谷隆一さん
アスパラ収穫のイメージ写真

達人の目配りと太陽のもと
スクスク育った
春いちばんアスパラ

アスパラ農家の熊谷隆一さん

アスパラ農家 熊谷隆一さん

  • くまがいりゅういち
  • 岐阜県の入植者4代目として生まれ、昭和21年に東神楽で米農家を営む。60年からアスパラ栽培を開始し、平成5年から施設栽培に切り替え。4月から6月は、アスパラの収穫と直送品の発送に追われる毎日が続く。

認定商品:アスパラ

取材日:2018年4月26日

アスパラ栽培の達人がほれ込んだ希少品種

丘陵地の緩やかなうねりに沿って見渡す限り広がる田園。その一角、かつて田んぼだった場所に、栽培歴33年の熊谷隆一さんが管理するアスパラのビニールハウスが並んでいます。

風景の写真.jpg
ビニールハウスの写真

陽光がさんさんと降り注ぐハウスの中では、ふかふかの土の寝床から顔をのぞかせたアスパラが、春の光に向かって伸びていました。どのアスパラも見るからにみずみずしく、立派です。

「このハウスはね、アスパラを植えてからもう14年くらいになるかな。そのくらい年数が経つと普通はもう寿命って言われるんだけど、うちの古株はまだまだ元気。良いアスパラが未だに採れるんだ」。熊谷さんは、わが子を見るような目で足元のアスパラを愛おしそうに眺めて、笑顔で語ります。

敷地内にはこのハウスを含め、10棟のハウスがあり、人に例えるなら幼稚園から働き盛りまで、経年数の異なるアスパラを栽培。そのすべてのハウスにアスパラ名人、熊谷さんがほれ込んだ品種が植えられています。「採れるのはLサイズ以上が7割。太いのにとても柔らかくて、収量が安定しているんだ。しかも、病気に強いので、農薬に頼る必要もない。良い品種だと思うんだけど、今はうち以外ではあまりつくられていない品種なんだ」。

アスパラの写真
様子をうかがう熊谷さんの写真
熊谷隆一さん
説明する熊谷さんの写真

米から野菜、アスパラへ。
大地に刻まれた格闘の歴史

熊谷さんは4代続く米農家。しかし、昭和45年から始まった国の減反政策によって、野菜栽培を手掛けるようになりました。「ところが、もともと田んぼだった畑は粘土質の土だから、上手く育たなくて難儀したものさ」。そこで、管理がしやすいと勧められたアスパラの露地栽培に挑戦。少しでも反収を上げたい一心でアスパラ栽培に取り組みましたが、いくら頑張っても、高値のつくLサイズのアスパラはたくさん採れませんでした。

14年くらい前、熊谷さんはJAを通してハウス向きの優良品種と出会いました。以来、少しずつ露地からハウス栽培に切り替え、満足のいくアスパラを収穫できるようになったといいます。「粘土質の土地は表土が浅く根を横に広げてしまうから、土が柔かくなる工夫をしている。そうすると真っすぐで太いアスパラが採れやすくなるんだ」と、日に焼けた顔をほころばせながら、熊谷さんはとつとつと語ります。

収穫の様子
収穫の様子2
選別の様子

名人が丹精込めて育てたアスパラが、収穫期を迎えるのは5月。それから1カ月間は、夜明けからハウスを回り、作業に追われる毎日が続きます。ハウスから運び出されたアスパラは、冷蔵庫でしっかり冷やしてから、長さを切りそろえ、その日のうちに出荷。「アスパラは鮮度が命、採れたてを送れるのが生産者の強みです。道外へも航空便を使って、翌日配達をしています」と、発送を担当する妻の栄子さん。その手元にはシーズン中、常に100枚以上の発送票が出番を待っています。

ハウスで収穫をとりしきる熊谷さんと、着々と荷造りをする栄子さん。その「あ・うん」の呼吸も“種と実品質”を支えています。

採れたてアスパラの写真
熊谷さんご夫婦

これからの展望

収穫期の終わったアスパラには、有機質肥料を施しそのままハウスで夏を越します。強い日差しの下で葉を茂らせ、根に力を蓄えて来年の芽を育てるのだといいます。作物は農家の足音を聞いて育つ。

熊谷さんは収穫後もこまめにハウスを覗いて、アスパラの様子を見ています。

今年73歳になった熊谷さんは「農家は私ら夫婦の代で終わりかなって思っているけどね」とポツリ。そう言いながらも、畑には既に更新された1,2年生のアスパラ・ハウスが2棟。これからも、春の訪れとともに熊谷さん夫妻のアスパラ生活は続きます。

土の様子
アスパラの写真
収穫の様子
収穫の様子2
選別の様子
選別の様子2