トップ種と実モノ語り株式会社 吉原農場 取締役 吉原康弘さん
アスパラ

冬の特別な食卓を飾る
甘くみずみずしい
雪国の贅沢アスパラ

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株式会社吉原農場 取締役 吉原康弘さん

  • よしはらのうじょう よしはらやすひろ
  • 農場の4代目、32歳。岩手大学農学部で農業経営経済学を学び、現在は家族、農場スタッフ10名で、米や小麦、ビート、アスパラ、トウモロコシなどを生産。目指しているのは、人と自然の一番の接点である「食」を支える存在。

認定商品:雪アスパラ

取材日:2020年3月2日

東神楽の景色

食のプロたちが待ち焦がれた
アスパラ王国の新しいスター

安定した気候と大雪山系の豊かな水に恵まれた東神楽は、古くからアスパラ栽培が盛ん。4月から6月にかけ、町内のハウスや露地の畑で天に向かってのびのびと育ったアスパラが全国に向けて出荷されています。

そんなアスパラ王国に4年前、畑もまちも雪に覆われる12月から2月にかけて出荷される新星「雪アスパラ」が登場。旬の常識を覆したアスパラは、瞬く間に道内外の料理人、食通が注目する年末年始の食材になりました。「きっかけは、冬になると品薄になる地元野菜をもっと充実させてほしいという、東神楽近郊のシェフたちの要望でした」と、吉原農場の4代目、吉原康弘さんは語ります。

旭川空港に隣接する吉原さんの農場でも露地の春アスパラを栽培。毎年、5月から6月にかけ、2ヘクタールの畑で上質なグリーン、パープルのアスパラを生産。毎日、300キログラム以上出荷してきました。

吉原さんは父の代から40年間蓄えられえてきた技術と経験を生かし、年末年始の食卓の主役になれるようなアスパラを生産できないかと模索。「一般的なグリーンのほか、料理のバリエーションが増えるようにホワイトも生産品目に加え、道内では珍しい冬のアスパラ栽培に取り組み始めました」と、吉原さんは4年前を振り返って話してくれました。

アスパラ2色
ホワイトアスパラ

育てた株の余力を残さず、採りきるという英断

雪アスパラづくりは、収穫2年前の春先に行う種まきから始まります。ハウスでの育苗を経て、露地の畑に定植。小さなアスパラの株は自然環境豊かな大雪山麓で、スクスクと健康に育ちます。そして、2度目の秋を迎えた株は、20度に保たれたハウスへ引っ越し。12月を迎えると、土の布団の中で過ごしていたアスパラは一斉に目覚め、ためていた力を爆発させるように茎を伸ばし始めるといいます。

「気温の上下が激しい春の露地と違い、適温に保たれたハウス内でストレスを感じることなく育つ雪アスパラは、筋っぽさやエグミがなく、甘さとみずみずしさをたっぷりと蓄えています」。遮光したハウスで軟白栽培するホワイトは、雪のような白さも自慢です。収穫した雪アスパラは外光が入らない暖かな地下室で選別、鮮度保持シートに包み、冷蔵。もぎたてのみずみずしさそのままに、JAや地元と東京の飲食店などに届けられています。

アスパラ出荷の様子
アスパラ出荷の様子

2月までのシーズン中に収穫されるアスパラは、春アスパラの2日分の収穫にも満たない約600キログラム。2年かけて育てた株は、余力を残さずすべて採りきり、シーズンが終わると廃棄します。こうした贅沢な育て方も、春アスパラでは味わえない美味しさの秘密だといいます。「そして、何より本来は農閑期である冬にもかかわらず、より良いものを届けようと一緒に頑張ってくれている家族やスタッフが居てこそできる取り組みなんです」。

そう語る吉原さんのもとには、直接料理人から雪アスパラの感想が届きます。「前のシーズンよりもさらに美味しいものを届けたいと、栽培の要である土づくりにも力が入ります」。微量要素を含むバランスのいい自家配合の土は、気温変化や病気に強い健康な作物をつくります。「化学肥料や農薬に頼らない土づくり、栽培技術をさらに磨いていきたいと思っています」と、吉原さんは目を輝かせて語ってくれました。

吉原農場のみなさん
雪アスパラ

これからの展望

常に使う人、食べる人の笑顔を思い浮かべながら、土と向き合っている吉原さんは家族やスタッフと共に雪アスパラに続く新しい冬のスターづくりにも取り組んでいます。「クリスマスシーズンから、春を先取りできるような野菜をもっとつくりたいと思っています。道内の他地域でつくられていない西洋野菜を選んで、試作もしています。楽しみにしていてください」と、吉原さんは意欲的に話してくれました。

アスパラ収穫の様子
アスパラ収穫の様子
アスパラ収穫の様子
アスパラ収穫の様子
アスパラ収穫の様子
アスパラ収穫の様子